「完全なる首長竜の日/乾禄郎」あらすじ・感想

完全なる首長竜の日 小説のあらすじ・感想

あらすじ

少女漫画家の和淳美には、自殺未遂をした弟・浩市がいる。

浩市は植物状態となっているが、「SCインターフェース」という機械によって、意思疎通「センシング」が可能であった。

淳美と浩市の意識と記憶が繋がり、妄想のようでありどこまでも現実のような、センシング。

治療を進めるためにも浩市の自殺の原因を明らかにしようとする淳美だが、浩市は問いかけに応えず、センシングの中でも自殺を繰り返す。

何度も浩市とのセンシングを行い、記憶をたどっていくうちに、淳美はひとつの答えにたどりつく。

感想

第9回「このミステリーがすごい」大賞作品。

どんなミステリーかとわくわくして読み始めるも、事件らしい事件は起きません。

しかしなんとなく不穏な空気が漂って、淳美がセンシングから目覚めると、まるで自分もセンシングしていたのかと思ってしまうように作品の世界に入り込んでいた自分に気づきます。

気になるタイトルは、サリンジャーの「A Perfect Day for Bananafish」から取っていて、なんとも洒落ています。

このサリンジャーの作品と、荘子の「胡蝶の夢」がこの物語にとって重要となっていて(私はこの二つを知らなかったけど作中で説明があるので問題なく楽しめます)、この二つによって、この物語ってそういうことなのかな、と読み手は察することができます。

それでもラストはどうしようもなく切なくて、言葉を失う衝撃です。

ミステリーであり、SFであり、スピリチュアルな要素あり。

独特の空気を味わえます。

ころり的好き度

★★★★☆

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