あらすじ
家政婦として派遣され、世話をすることになった人は、80分しか記憶ができない数学博士だった。
大事なことを忘れないためのメモを体に貼り付け、考えることや話すことは数学のことばかりの、風変わりな博士。
やがて小学生の息子も出入りするようになり、博士との関わり方を模索しながら日々を過ごすうちに、博士と数学は大切な存在になっていく。
感想
博士と数学に対して徐々に愛情や友情、尊敬が募っていく様子が、とても清らかで温かいです。
情景の描写も心理描写もしっかり書かれていて、鮮やかに思い描ける一方、博士・未亡人・ルート等、登場人物の本名が明かされないところや、未亡人との関係、子供への愛情の理由などはっきり書かれていないところがあり、想像する楽しさも与えてくれます。
また、博士による数学の講義がどれも美しいです。
どんな数字にもドラマがあって、どんな数字同士も運命的なつながりがある。博士との数学談義に触れる度、数学と人生を重ねずにはいられませんでした。
悲しさが漂うシーンもありますが、温かな読後感に包まれるお話でした。
ころり的好き度
★★★★★
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