あらすじ
高校生である暁海の父は、母とは違う女性のもとへ通うようになった。
何もかも筒抜けの狭い田舎で、日に日にもろくなっていく母と暮らす暁海は、京都からの転校生・櫂と心を通わせるようになる。
男に依存する生き方しか知らない母を持つ者同士惹かれ合った暁海と櫂だったが、作家として活躍し始めた櫂と、母を支えることで精一杯の暁海は、次第にすれ違っていく。
家族の在り方や自分の人生について疑問を投げかける、本屋大賞受賞作。
感想
暁海も櫂も、どちらも幼いころから頑張っていて、助けてあげたくなります。
血のつながった家族だから支えなくてはならないと思うのは当然だし、父の不倫相手にも関わらず自立した強い女性に憧れるのも理解できる。
好きになった人が夢を追いかけるのを応援したい気持ちも、変わっていくのが悲しい気持ちもわかる。
暁海と櫂の視点で交互に語られていくのですが、同じ女性だからか、個人的には暁海の方が感情移入しました。
登場人物はみな一筋縄ではいかない関係性ばかりですが、特に父の不倫相手という、絶対に許せそうにない存在である瞳子さんが、暁海の生活の支えや踏み出す勇気になっているのがやるせないなぁと思います。
恋愛小説ですが、恋愛だけでなくヤングケアラーや閉鎖的な田舎、経済的な自立等の重いテーマがたくさん絡んでいて、どしりと胸にきます。
たくさんすれ違って苦しんで、読むのが辛い場面もたくさんあって、最終的には暁海たちは周りから見たら不自然な形に収まりますが、複雑ながらも温かい気持ちになれるストーリーでした。
ころり的好き度
★★★★☆



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