あらすじ
山奥の小屋で幼少期を過ごした私、榊史郎は小学生の時、紫外線が見えるという蝶から見た世界をキャンバスに描き、その上に蝶の標本を貼りつけた作品を作った。
その作品をいたく気に入った留美ちゃんは、時が経ち成長して画家に、私は蝶の研究者になっていた。
色彩の魔術師の異名を持つ留美ちゃんが、後継者を決めるためかつての山小屋に集めたのは、モデル役の杏奈ちゃんと私の息子の至(いたる)、そして画家志望の五人の美少年。
そこで幼いころに私が作った標本を目にしたとき、私の体に電流が走った。
少年たちが蝶の化身に、背景も蝶の色彩に見えたのだ。
人間としては私だけに見えるこの美しい光景を、美しいまま多くの人に知らしめなければならない。
そうして私は「人間標本」を作製したのだ。
感想
まさかと思いましたが、本当に人間を標本にする話でした。
まず目に飛び込んでくる口絵の「人間標本」のイラスト。
恐ろしい、美しい、グロい、きれい。
生理的に受け付けない人も多そうです。
私としてもじっくり見ると悪い夢を見そうで初めは流したのですが、最終的には作中の製作工程と照らし合わせながら何度も見返していました。
口絵の標本は着色されていないのですが、作中では蝶が見ている世界をイメージして鮮やかに着色してあるようで、そうなると口絵の印象とはまたガラリと変わりそう。怖いです。
口絵はもちろん本文もかなり衝撃的なのですが、猟奇的な思考への怖いもの見たさや、蝶の世界への知的好奇心で、読まされてしまいます。
読むのが辛い、でも先が気になる、おもしろい、怖い。そんな思いで榊の手記を読み終わってもまだ半分。
これからどうなるのかと読み進めると、どんでん返しに次ぐどんでん返し。
伏線もあって、ちゃんとミステリー。
狂気だけでなく、愛や悲しみも込められていました。
猟奇的な描写があるので誰にでも勧められるものではないですが、いろいろな感情が大きく揺さぶられ、とても面白かったです。
ころり的好き度
★★★★★



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