あらすじ
ピアノを学ぶためオーストリアに留学中だった如月敬輔は、強盗事件に巻き込まれた少女・千織を守るのと引き換えに、左手の薬指を失う。
身寄りがなく知的な障害を持つ千織は、敬輔とともに暮らすこととなった。
やがて、千織には一度聴いただけで楽曲のすべてを記憶できる能力があることがわかり、敬輔は千織にピアノを教え込む。
敬輔と千織はあちこちの施設を訪れてピアノを披露する生活をしていたが、ある時訪れた病院の療養センターで千織は、センターの母のような存在である真理子とともにヘリコプターの墜落事故に遭う。
その時から、奇蹟の四日間が始まった。
感想
まず、舞台で完璧な演奏をする少女と、関係性が謎の青年という導入が、なんだか神秘的で素敵だと思いました。
敬輔が指を失った経緯や、千織の脳の障害など、けして押しつけがましくないのに、悲しさ、切なさ、驚きなどが静かに、そしてしっかりと伝わってくる綺麗な文章です。
千織と敬輔が主人公の物語だと思って読んでいたのですが、途中から真理子に重点が置かれるようになり、少し面食らいました。
真理子の戸惑い、嘆き、悟りはどれも胸を打ち、クライマックスは鮮やかで臨場感のある情景描写とクラシックの名曲で、とてもドラマチックかつ神々しく描かれていました。
個人的には”真理子が一つだけ千織に渡したもの”が腑に落ちませんでした。
チャーミングな結末だとも思いますが、それは千織が自分で見つける物なのではないのかと思ったのでした。
素敵な文章ですが、恋愛が絡むファンタジーが個人的好みではなかったです。
ころり的好き度
★★★☆☆


コメント