「カフネ/阿部暁子」あらすじ・感想

カフネ 小説のあらすじ・感想

あらすじ

先の見えない不妊治療に苦しんでいたところ、夫から一方的に別れを告げられ、さらに大好きな弟が急死した。

愛し合っていると思っていた夫と、誰にでも愛される弟を失い、失意の底にいた薫子は、弟の遺言書に従うため、弟の婚約者に会う。

無愛想で、かわいらしさのないかけらもない婚約者・せつなだが、体調を崩した薫子のために作った料理は、とても美味しかった。

やがて週末の家事代行ボランティアを通じて二人は距離を縮めていき、生活を整えることの大切さや、弟やせつなの知られざる一面を知っていく。

感想

愛想も可愛いげもないせつなの登場に面食らいましたが、料理の手際の良さとアイディアは素晴らしく、食べる人を想ったおいしそうな料理と無愛想なキャラクターとのギャップにすっかり魅せられました。

人間は自分以外の人間のことは何ひとつわかるわけない。

せつなの言葉は冷たく感じることもありますが、忘れてはいけないことだと思います。

逆に、わかってもらえないからと黙っていることもいけない、大事な人には自分のことを話したいなとも思いました。

また、タイトルであり家事代行サービス会社の社名でもある「カフネ」は、愛する人の髪にそっと指を通すしぐさを意味する素敵なポルトガル語なんですが、社名となったエピソードはとても印象的で、鮮やかに想像できましたし、さらにラストで登場する「カフネ」はとりわけ美しく、愛おしく思い描くことができます。

読むほどに、美味しさと優しさと悲しさが溢れ出す、素敵な物語でした。

ころり的好き度

★★★★★

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